五日の死亡広告

昭和四十七年十一月四日 夜番引継
十八時七分、売店より返品の夕刊一部を受領。題字下の日付は本日。死亡広告欄に、団地線の運転手・西岡正夫、四十六歳、青葉団地交通宿舎、とあり。「十一月五日逝去」と印刷されていた。
西岡本人は六番乗場で十八時十分発の増発便に乗務中。住所、年齢とも社員名簿と一致した。広告主名はない。活字の欠けや貼り込みも認めず。
十八時九分、待合所のテレビが光化学スモッグ注意報を伝えた。窓を閉めたため、六番乗場は排気がこもっていた。西岡が頭痛を訴え、車掌も気分が悪いと言ったので、発車を見合わせ、乗客を五番線の定期便へ移した。団地帰りの列から苦情が出たが、輸送主任が対応済み。
十八時十二分、車庫係が増発車の排気管継手の外れを確認。排気が床下から運転席側へ回っていた。車両は回送扱いとした。西岡と車掌は休憩室で回復し、帰宅させた。
十八時十五分、夕刊を再確認。「十一月五日逝去」が「十一月三日逝去」に変わっていた。ほかの文字、紙の折り目、欄外の鉛筆線は同じ。西岡本人にも見せたが、笑って持ち帰ろうとしたため止めた。
当該紙は遺失物戸棚上段、運行日誌の下に保管。誤植なら新聞社へ照会のこと。なお、廃棄しないこと。
朝番は本文を読み直す必要なし。西岡が出勤した時点で、死亡の日付だけ確認されたい。
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