相談受付票 第四号

市民生活相談課 面談記録票
【事案番号】第21-0488号 【受付日時】2021年7月14日(水)14:15〜15:02 【面談場所】本庁舎1階 市民生活相談室(第3相談ブース) 【相談者】矢野 節子(67歳・市内在住・単身世帯) 【対応職員】生活支援係 主事 岡田
【相談概要】 所持しているスマートフォン(簡単操作型端末)の挙動に関する不安。 自宅の居間に置いている端末に、本人が入力していない言葉が毎朝「検索履歴」として残っているとのこと。不審者による侵入や不正アクセスを疑い、警察へ赴いたが事件性がないとして当課を案内された。
【面談内容】 アクリル板越しに端末を預かり、ブラウザアプリの履歴画面を確認した。直近三日間の午前三時前後に、以下の文字列が検索されていた。
・せっちゃん 昭和34年 おたふくかぜ ・黄色い水筒 遠足 川原 ・せっちゃん 膝のすり傷 赤チン
相談者は文字入力がおぼつかず、音声入力の利用歴もない。念のため端末の設定を開いたところ、通信契約は半年前の料金未納により停止されており、庁内Wi-Fiにも自宅の有線回線にも接続されていない完全な機内モード状態であった。通信ログが存在しないにもかかわらず、検索結果のキャッシュおよび履歴の欄だけが直接更新されている。 相談者は画面を凝視していたが、突然「これ、お母さんだわ」と呟き、目元を押さえた。幼少期のあだ名やすり傷の思い出は、三十年前に他界した実母しか知らない内容であるという。誰かが部屋に忍び込んでいるのではなく、亡くなった母親が天国から自分を案じて調べてくれているのだと解釈した様子。 当初の恐怖感は完全に消失し、安堵の表情を見せられた。内部メモリの表示不具合と思われるが、ご本人の精神的負担が大幅に軽減されたため、無理に通信の仕組みを説明して訂正することは避けた。本人の希望により、見守り支援の登録は見送り。様子見とする。
市民生活相談課 面談記録票
【事案番号】第21-0488号(再来庁) 【受付日時】2021年8月4日(水)11:20〜11:42 【面談場所】本庁舎1階 市民生活相談室(第3相談ブース) 【相談者】矢野 節子(67歳) 【対応職員】生活支援係 主事 岡田
【相談概要】 前回相談の経過報告。
【面談内容】 不織布マスク越しにも頬の痩せが目立ち、足取りがやや重い印象。ただし表情は極めて穏やか。 母からの「調べ物」が毎晩続いているとのことで、端末を提示された。履歴には以下の語句。
・矢野節子 不整脈 前兆 ・矢野節子 常用薬 相互作用 ・矢野節子 食事量低下 脱水
相談者談によれば、履歴に出た通りに持病の血圧降下剤を減らし、食事も無理にとらないようにしたところ、体が羽のように軽くなったとのこと。「母は生前とても几帳面な人だったから、私の体を誰よりも正確に管理してくれている。病院の先生より母の言うことのほうが信頼できる」と語る。強い信仰心のような納得を得ており、医師の診察を勧めたが「母がいるから余計なお金は使わなくていい」と笑顔で固辞された。ご本人の幸福感・安心感が高く保たれていることを尊重し、強制的な受診指導は控えた。
市民生活相談課 面談記録票
【事案番号】第21-0488号(3回目) 【受付日時】2021年8月23日(月)16:40〜16:47 【面談場所】本庁舎1階 市民生活相談室(第3相談ブース) 【相談者】矢野 節子(67歳) 【対応職員】生活支援係 主事 岡田
【面談内容】 相談者より「お礼だけ言いに来た」との申し出あり。皮膚は陶器のように白く乾き、声はかすれていたが、終始穏やかに微笑んでおられた。 昨夜、端末に以下の検索があったとのこと。
・矢野節子 呼吸停止 推定時刻 ・矢野節子 室内変色 日数 ・矢野節子 単身 無縁仏 納骨先 ・矢野節子 除票 届出人なし
「母がね、後の片付けまで全部調べて、支度をしてくれたの。一人で死ぬのがずっと怖かったけれど、こんなに段取りよく準備してもらえたら、何も思い残すことはないわね」 深く一礼し、相談ブースを退出された。
【対応結果】 相談者の長年の孤独感および死生観に関する不安は、家族の絆の再確認によって完全に解消されたと認められる。行政による見守りや介入の余地はなく、本人の主体的かつ安らかな自己決定がなされている。本件対応完了とする。